この研究は、水田土壌からリボソームRNA遺伝子のクローンとして検出された系統的に他の生物と隔たった微生物の遺伝子構成の解明と培養を試みるものである。昨年度は、遺伝子として検出される第4ドメイン生物の濃縮法を確立するため、マグネチックビーズを用いた方法を試験した。昨年度の試験では、第4ドメインに対して特異的なプライマーをビーズに付着させて、第4ドメイン生物の濃縮も試みたが、充分な量の濃縮はできなかった。そこで、今年度は古細菌全体を濃縮させ、予測される古細菌の存在量を高い回収率で回収できることを確認した。最終的には、遺伝子ライブラリーを作製するのに充分な細胞は得られなかったが、実験規模を拡大させれば遺伝子ライブラリーの作製が可能な段階に到達した。培養法については、いろいろと検討したが、成功には至っていない。そこで、第4ドメイン生物の生態的分布を調べることとした。今回は、海洋の堆積物からクローンが分離できるか試験した。東京湾で採取した堆積物全てから第4ドメイン生物のクローンが分離され、クローン間の塩基配列は非常に大きな多様性を示した。以上の結果から、第4ドメイン生物は海洋にも広く生息していることが確かめられた。また、FISH法を用いて海洋堆積物中の第4ドメイン生物と古細菌の量を測定したところ全生物量の10〜20%に達することを明かとした。このことは、温泉や塩湖などの特殊な環境に生息すると考えられている古細菌が自然界に広く分布していることを示している。
|