研究概要 |
菌類のアロメラニンは、1,8-ジヒドロキシナフタレンから生合成されるメラニンであり、本研究は、その化学構造の解明を目的としている。今年度の研究では、菌類として農業上重要な菌類として、いもち病菌(イネ菌とミョウガ菌)について、それらのアロメラニンの培養による蓄積の様子とその化学的な抽出方法について検討した。イネ菌は、振盪培養によるメラニン化は遅いのに対して、ミョウガ菌は振盪培養でも菌体の黒色化が良好であることが分かった。そこでアロメラニンの抽出材料として、ミョウガ菌を用いることにした。ミョウガ菌を寒天培地または液体培地による振盪培養により、いずれも培養後期(10日以上)に菌体の黒色化がしたものを材料に用いた。この黒色菌体を、様々な条件(熱水抽出、超音波破砕、濃アルカリ、強酸処理など)で色素の抽出を試みた。その結果、熱水抽出、超音波、強酸処理では、まったく抽出されず、アロメラニン構造はこれらの化学的処理では破壊されず極めて安定なものであることが判明した。唯一、黒色色素の一部と思われるものが遊離したのは、濃アルカリ条件(ガラス器具洗浄用)下に沸騰水中での加熱により、アロメラニンの一部のフラグメントと思われるものが溶液中に分解遊離することが分かった。今後、徹底的な化学的処理による夾雑物の除去方法を確立し、アロメラニン構造を走査型プローブ顕微鏡などを用いて、その解析を進める予定である。また合成アロメラニンの調整とその解析についても実施する計画である。
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