ヒトのゲノムには少なくとも10個のトリプシン類似遺伝子がコードされている(サザン解析の結果)。しかし、酵素タンパク質レベルでその諸性質が解析されたのは、このうち2つだけである(トリプシン1型、2型と呼ばれ、等電点以外の性質に差は見られない)。そこで、未発見のトリプシン・アイソフォームを同定することを目的に、ヒトの膵臓cDNAライブラリーを作成、既知トリプシン配列をプローブにしてスクリーニングをした。得られたポジティブクローンの大半は既知のものであったが、そのなかにわずかながら未知のクローンを発見し、これをメソトリプシンと命名し(等電点が1型と2型の中間(メソ)位にあることから)、報告した。 本年度は、ヒトゲノム上にメソトリプシン遺伝子の位置を同定した。その結果、メソトリプシン遺伝子は4つのエキソンから成り、他のトリプシン・アイソフォームがクラスターを形成するベータTレセプター近傍とは別の第9染色体上に存在することが判明した。
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