研究概要 |
本年度研究実績の概要 (i)トレーサー実験のための懸濁培養条件の改良 スギカルスを、トレーサーを含むMS液体培地に移植し、縣濁培養4日目にヒノキレジノールを酢酸エチルで抽出し、順相クロマトグラフィーにより精製後、さらに逆相HPLCにより分取した各フラクションの放射活性を測定することにより、ヒノキレジノールへの放射活性取り込み率が低くてもかなり正確な値を得られるように工夫した。 (ii)位置特異的にラベルした前駆体投与実験 上述した条件でスギ細胞培養に、位置特異的にラベルされた[ring2,6-3H]L-フェニルアラニン、[U-14C]L-フェニルアラニン、及び[1-14C]L-フェニルアラニンを投与し、3Hと14Cの取り込みから、フェニルアラニンが針葉樹ノルリグナンであるトランス-ヒノキレジノールの前駆体であることを確認した。さらに、側鎖のどの炭素が脱離してC6-C3-C2-C6骨格が形成されるかを明らかにするため、上述の各前駆体の放射活性取り込み率の比を計算した。その結果から、トランス-ヒノキレジノールの生合成に際してフェニルアラニンの1位炭素が離脱しないという結果が得られた。一方、草本(アスパラガス)のシス-ヒノキレジノール生合成においてはフェニルアラニンの1位炭素が離脱するという結果が最近報告されており、草本の被子植物と裸子植物(針葉樹)とで、ノルリグナン類の生合成経路が異なる可能性が示唆され、大変興味深い。今後さらに研究を継続する必要があろう。
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