研究概要 |
地球環境問題の深刻化にともない、更新可能な水産生物資源を持続的に利用することの重要性が急速に増大している。しかし問題の緊急性にもかかわらず、具体的にどのようにしたら持続性が維持されるかは殆ど研究されていない。瀬戸内海でも、新型赤潮や貝毒の発生など水産資源への阻害要因が多いため、瀬戸内海の水産生物資源の持続性を定量的に評価してみようという着想に至った。瀬戸内海における持続的生物生産を実現するために、本研究ではまず持続性を評価するための複数の評価指標とその指標性を明らかにする。次に、選定された評価指標を実際に用いる際の定量的評価基準を提唱する。構築された評価体系を用いて持続性からみた瀬戸内海の現状と問題点を明らかにする。持続性の評価法を体系化し、構築された評価法を用いて瀬戸内海の水産生物資源の持続性を検証し、生物資源の持続的利用に対する提言をとりまとめるため、本年度は下記の計画により研究を実施した。(1)遡及研究:昭和30年代から今日まで約40年間の水域環境、漁獲、一般生物に関するデータを収集、解析し、水産生物資源の持続性の変動要因を整理、考察する研究の中で,特に次項の実験的研究と並行して広島県東部魚類養殖漁場の生産データの歴史を遡及して有機物負荷の経年変化を推定した。(2)湾の開放度・閉鎖度と平均滞留時間との相関:湾の開放度・閉鎖度と平均滞留時間との相関を調べて,地形特性とともに場の流動特性(潮位差)を導入した開放度,閉鎖度の改善案を作成した.また,開放度,閉鎖度が内湾の海水交換特性を反映しているとすると,湾に対する「流入負荷」と「水質・底質」は「開放度,閉鎖度」を変数として相互に関係しているはずである.この考えに基づいて,「開放度・閉鎖度」と「流入負荷」及び「水質・底質」の関係を求めた.
|