本研究の目的は、アジアの途上国を中心に穀物市場の短期的変動がもたらす食料安全保障の確率的脆弱性の評価を行うことである。初年度の平成11年度は、アジア途上国を中心とした世界穀物需給モデルの開発、そのモデルを使った米、小麦、トウモロコシについての脆弱性評価、アジア諸国の穀物需給の動向と食料安全保障対策について分析を行った。 世界穀物需給モデルを使ったシミュレーション分析によると、穀物市場への影響は在庫水準が低く、作柄変動が大きいほどその程度が著しいが、今後10年間全体での影響としては在庫水準の低下よりも作柄変動の拡大の方が大きいことを確認した。コメについては、最近の作柄変動の縮小による輸入変動の縮小傾向も認められたが、小麦については特に人口大国のインドの輸入変動の拡大傾向が認められ、世界貿易の主要な変動要因となることが予想された。トウモロコシについては、経済発展に伴って飼料用需要が急増しており、その作柄変動も拡大しているので、これまでのような輸入への過度の依存による畜産部門の拡大はその経営を不安定にする可能性が高いことを確認した。
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