平成11年度は卵用種として白色レグホーン種系のイサホワイト、肉用種としてアーバーエーカー富士(ブロイラー)の雛を用いて、各種粘膜付随リンパ組織の孵化後の成長に伴う機能形態の変化を、免疫組織化学的手法により比較検討した。孵化後の各時期において、各ニワトリの回腸パイエル板(PP)、盲腸扁桃(CT)、鼻腔周囲組織(NT)およびハーダー腺(HG)等のリンパ組織を採取し、T細胞サブセットの検出にはPLP液による固定後、凍結切片を作製し、免疫グロブリン(Ig)含有形質細胞の検出にはブアン固定後、パラフィン切片を作製し、それぞれニワトリIgA、IgM、IgGおよびCD3、CD4、CD8、TCRαβ、TCRγδに対する抗体を用いて免疫染色を行った。卵用種のニワトリの鼻腔と腸管に付随するリンパ組織において、T細胞サブセットの方がIg含有形質細胞より数多く分布し、鼻腔粘膜ではさらに顕著であったが、分布の特徴は類似していた。しかし、HGの腺体間質部には各種Ig含有細胞が大部分を占めていた。20週齢以後、大部分の粘膜付随リンパ組織において、各種リンパ球がやや減少して幾分退化徴候を示したが、それらは成鶏でも存続していたのに対し、PPでは20週齢においてIg含有形質細胞の減少が顕著で、25週齢では大部分のもので完全に退化消失していた。一方、肉用種では各粘膜付随リンパ組織におけるT細胞サブセットやIg含有形質細胞の分布の特徴は卵用種のものと極めて類似していたが、卵用種に比べて発達が早く、5〜6週齢でピークに達し、PPの退化消失も早い時期に認められ、体成長との関連が推察された。また肉用種のCTのピーク時の断面積は卵用種のものの約2倍あり、各リンパ球の集積も極めて顕著であったことより、ニワトリの下部消化管における免疫応答が肉用種の方が卵用種のものより活発であることが示唆された。
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