昨年度に引き続き、サンドイッチ共生培養系の更なる確立と、外生菌根菌による有機塩素化合物の分解を試みた。 外生菌根菌(ウラムラサキ)と植物(アカマツ)とのサンドイッチ共生培養系に、炭素源として菌のみの純粋培養系ではほとんど利用されない糖を添加すると、植物の根の近傍に特異的に菌が生長した。さらに、ハルティッヒネットとマントルをもつ、特異的に分岐した形状をもつ外生菌根と、分岐は見られないが菌糸が表皮細胞間隙に侵入した根が顕微鏡観察により観察され、宿主植物に依存した共生系が確立されたことがわかった。 まず、クロロ安息香酸の外生菌根菌の純粋培養系による分解を試みた。しかし、菌糸の生長が阻害された。一方、木材腐朽菌によるいくつかの有機塩素化合物の分解に重要なはたらきをしているシュウ酸の、外生菌根菌による培地への蓄積は木材腐朽菌の1/100程度であった。さらに、シュウ酸生合成系酵素(オキザロアセターゼ、グリオキシル酸デヒドロゲナーゼ)活性も大変低かった。現在、クロロ安息香酸が分解されたかどうか、培地より分解生成物を抽出し、GC-MSによる分析を行っている。 本研究では、まず植物との共生系を実験室的に作成しやすい外生菌根菌を選択し、共生系の機構を検討しながらその菌における有機塩素化合物の分解を試みる方法論を取った。従って、共生系におけるこれら有機塩素化合物の分解は引き続いて検討する。しかし、バイオレメディエーションに集中するのであれば、多くの外生菌根菌による純粋培養系でのバイオレメディエーションをまず検討し、あわせて、共生系の作成が可能かどうか検討すべきであった。 当所の目的は部分的にしか達成されなかったが、本研究の一部に関しては、日本菌学会第45回大会で発表する。
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