研究概要 |
アクアポリンは細胞膜の水チャンネルで細胞膜の水透過に関与する.多くのアイソフォームが知られているが,その生物学的な役割には不明の点が多い.今回は水中から陸上生活への適応という進化の過程で細胞表面などでの水の移送がどのように調整されているかをアクアポリンアイソフォーム特異的な抗体を作製して検索した.アクアポリンcDNAより導き出されたアミノ酸シークエンスに基づき,アイソフォーム特異的なC末の部分ペプチドを合成した.ヘモシアニンとのコンジュゲートを用いて家兎を免役し,アクアポリン2,アクアポリン3,アクアポリン5の特異抗体を得た.アクアポリン1ならびにアクアポリン4については継続して抗体の作製を試みている.これらの抗体を用いてラットの皮膚を染色したところ,アクアポリン3で表皮に陽性反応を得た.ウェスタンプロッティングによっても,ペプチド阻害実験等からアクアポリン3に特異的なバンドを検出し,表皮にアクアポリン3が存在するのが確認された.ナノゴールド免役電顕法によりアクアポリン3は表皮基底細胞から中間層細胞の細胞膜に局在するのが判明した.尿管,膀胱などの尿路系上皮や,口腔,食堂,胃などの消化器系上皮などでも同様のアクアポリン3の局在が観察された.またラット胎仔発生の過程においても,出産が近づくとともに表皮のアクアポリン3の発現がみられた.以上の結果は,アクアポリン3が乾燥ないし,高浸透圧にさらされる上皮の結合織側に局在し,これらの上皮細胞への水の供給を担っていることを示唆している.
|