研究概要 |
大動脈弓圧受容体からの抑制性神経線維(aortic depressor nerve;ADN)がNTSニューロンに投射する神経終末を同定するために,生体においてADNにDi-Iを注入し,その後作製したスライス標本においてDi-I染色陽性神経終末付着神経細胞を確認後,同細胞を急性単離した。また,単離した細胞に付着するその他の神経終末をFM1-43にて染色することに成功した。単離した神経細胞にパッチクランプを適用して電流記録を行い,また,ガラス刺激電極を用いて同定した単一神経終末刺激を行い,刺激によって活性化される単一神経終末から放出される伝達物質によるシナプス後電流を記録することに世界で初めて成功した。 この技術を利用して,生体内における単一GABA神経終末において,刺激により開口するシナプス小胞の数は1-4個であり,活性化するシナプス細胞のGABAA受容体の数は10-30個であることが判明した。刺激による伝達物質放出にはナトリウムチャネル活性化に引き続くカルシウムチャネルの活性化が必要であることが判明した。また,機能しているGABA神経終末の分布は近位樹状突起に多く,細胞体自体には比較的少ないことが判明した。この技術は中枢神経のどの部位にも普遍的に応用可能であり,神経細胞間情報伝達様式の研究に新たな展開を示す礎になることが期待される。
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