研究概要 |
時間記憶形成における時計遺伝子の役割 雄ラットに明暗サイクル下で午前10時から2時間のみ餌を与える周期的制限給餌を2週間負荷して時間記憶を形成させた後、一旦自由摂食に戻して1週間後にさらに3日間絶食状態においた。制限給餌下、自由摂食下、絶食下で4時間毎にラット脳を摘出し、視交叉上核、室傍核、頭頂皮質、線条体、梨状葉における時計遺伝子Clock、BMAL1、Per1,2の遺伝子発現リズムをin situ hybridization法を用いて測定した。その結果、視交叉上核における時計遺伝子発現リズムは制限給餌群と対照群で差はなかったが、室傍核、大脳皮質、線条体においては制限給餌群で給餌前ピークをもつ概日リズムが発現した。給餌前ピークは特に室傍核、線条体、梨状葉で顕著であった。制限給餌により形成された時計遺伝子発現の給餌前ピークはラットを自由摂食に戻すと室傍核を除く他の神経核では消失し、対照群と同じ24時間リズムに戻った。室傍核では時計遺伝子の発現は2相性を示し、概日性ピークの外に給餌前ピークも観察された。一方、絶食下での遺伝子発現は室傍核で給餌前ピークが再現したが、その他の神経核では視交叉上核を除き24時間変動は消失した。以上の結果から、周期的制限給餌下で出現する給餌性サーカディアン振動(給餌前ピーク)には視交叉上核時計遺伝子は関与していないこと、室傍核における時計遺伝子の発現と時間記憶に何らかの関連性のあること、が明らかになった。
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