研究概要 |
水晶振動子を用いた超微小量測定センサの開発:AT-cutの水晶血結晶板上に金を蒸着し,ピエゾ圧電効果を利用した水晶振動子センサを作成した.この水晶振動子の電極質量変化と基本振動数との間には比例関係が成立するので,水晶振動子をマイクロバランスとして使用すれば,ナノグラム単位での微量成分の検出が可能である.本研究ではヒトIgG測定について検討した.ヒトIgGを電極表面に固定化する方法としてグルタルアルデヒド法を用いた.固定化の手順は以下のように行った.(1)チラミンを金電極表面に電解重合し,電極表面にアミノ基を導入した.(2)チラミンを電解重合した金電極をグルタルアルデヒド溶液中で反応させ,チラミンとグルタルアルデヒドとの間にシッフ塩を形成する.(3)以上の反応を経た電極を,ヤギ抗ヒトIgG溶液中に24時間放置する.このとき,グルタルアルデヒドのアルデヒド基と抗体のアミノ基の脱水縮合反応によりシッフ塩が形成され,抗体を金電極表面上に安定に固定化することができる.各種濃度のヒトIgG溶液(10,30,50μg/ml)に対する免疫センサ応答の経時的変化を調べた.IgGの投与によって極めてゆっくりとした時間経過で振動数が変化し,IgG50μg/ml投与では約20分後に最大振動数変化200Hzに達した.また反応の立ち上がり速度もIgG濃度に依存して速くなった.いっぽう,ウシ血清アルブミン(10μg/ml)を投与してもIgG投与時に観察されたような振動数の有意な変化が認められなかったことから,IgG溶液に対する免疫センサ応答はIgGと抗IgGによる抗原・抗体の特異的結合であり,非特異的タンパク質結合等によるものではない.
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