研究概要 |
前立腺癌培養細胞株におけるBMP発現の調節機構につき以下のような検討を行った。 (1)レポーター遺伝子による検討:申請者等がクローニングしたヒトBMP-3,5,6,8遺伝子の5'側上流領域をレポーター遺伝子を含むPlasmid(PGL-3,Promega)に結合し、種々の前立腺癌培養細胞株に遺伝子導入した。その結果、BMP-6遺伝子プロモータ活性において、steady-stateの発現とルシフェラーゼ活性との比較においてepigeneticalな制御機構の存在が明らかとなった。さらにBMP-6プロモータに存在するCpGメチル化とBMP-6遺伝子発現、alternative splicingとの関連を細胞株、病理組織切片を用いて検討し、Spl結合領域周辺のメチル化・脱メチル化が癌の進展・組織型と密接に関連していることが明らかとなった。 (2)活性型Shh蛋白の前立腺癌培養細胞株に及ぼす影響:ShhはN末端側に生物活性があり、通常の大腸菌を利用したリコンビナント蛋白を作成・精製することが困難なためShhのcDNAをSV40プロモータと結合したプラスミドを遺伝子導入した細胞株を作成し、培養上清中に活性型Shhが産生される系を作成した。現在、この活性型Shh蛋白を前立腺癌細胞株、PC-3、PC-3M等に作用させ、各前立腺癌細胞株において特に各BMP遺伝子発現に及ぼす効果を検討中である。 (3)前立腺癌におけるShh受容体(Patched)の変化を検討する:各培養細胞株において活性型Shhの受容体Patchedの変異の有無を検討したが、前立腺癌においてはShhおよびPatchedともに低発現で遺伝子異常は認めなかった。 (4)前立腺癌におけるBMP受容体シグナル伝達系の中で、とくにdpc4遺伝子変異について検討する:遺伝子プロモータ領域内のdpc4変異をスクリーニングし現在臨床病理学的解析を行い、子宮内膜癌において転写因子結合部位に欠失を発見した。
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