研究概要 |
前立腺癌におけるBMP-6の遺伝子発現調節機構について検討した。まず前立腺癌培養細胞株DU-145,LNCap,PC-3,PC-3Mにおいて、Norhtern blotによりBMP-6mRNA発現の差を見い出した。これらの培養細胞にBMP-6遺伝子プロモータを導入しても転写活性は同レベルであり、プロモータ領域のCpGメチル化によってBMP-6遺伝子発現が制御されることを明らかにした。さらに11例の前立腺癌症例についてin situ hybridizationを行い、原発巣と転移巣とにおけるBMP-6,BMP-2mRNA発現を解析した。原発巣において分化度の高い症例ではBMP-2mRNAの発現レベルが高いのに対して、BMP-6mRNAは低分化型腺癌の症例に高率に発現し、他臓器の転移浸潤部位ではBMP-6の発現レベルが高くなる傾向を認めた。BMP-6mRNA発現レベルと対応させて、原発巣および転移巣の標本からmicro dissectionにて腫瘍組織を切り出してBMP-6遺伝子5'側上流領域のCpGメチル化を解析した。原発巣の腫瘍において検出されるBMP-6遺伝子プロモータ領域のSp1結合配列周辺のCpGメチル化が、浸潤転移病巣においては脱メチル化を示していることを明らかにした。このように、腫瘍の増殖・進展の過程で生じるCpGメチル化の変化により付加的な遺伝子発現あるいは遺伝子発現の抑制を来たし、転移浸潤に関わる腫瘍の生物学的特性をもたらす可能性が示唆された。 以上の成果は、英文誌Journal of Bone and Mineral Researchに報告し印刷中である。また、成果の一部は第89回日本病理学会総会ワークショップ、第23回IAP総会シンポジウムにて発表した。
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