1.自己免疫性膵炎発症に関わる自己抗原の解明:自己免疫性膵炎患者では血清IgGが高値となることが多い。本患でIgGサブクラスを検討した結果、IgG4値が90%以上の症例で高値であった。健常人、慢性膵炎、膵癌では高値例をほとんど認めず、血清IgG4測定は臨床的に本疾患と膵癌との鑑別に有用と考えられた。また、シェーグレン症候群や原発性硬化性胆管炎でもIgG4高値例を認めないことより、これら自己免疫疾患に合併する膵炎と本疾患では背景に存在する免疫異常が異なっていると考えられた。ステロイド治療後に臨床症状の改善とともにIgG4ならびにIgG4サブクラス免疫複合体の血清値が有意に低下することより、本疾患の病態に密接に関与していると考えられた。これらの関与が報告されている疾患はアレルギー疾患、天庖瘡、膜性腎症など限られており、本疾患は従来の自己免疫疾患とは異なる、特異な免疫異常が背景に存在する可能性が考えられる。今後はIgG4抗体の認識する抗原の解明ならびに、IgG4サブクラス免疫複合体の役割について解明していくことが必要である。 2.自己免疫性膵炎の臨床像の詳細を明らかにする:自己免疫性膵炎患者で硬化性胆管炎病変を認めることがある。一方、本邦の原発性硬化性胆管炎(PSC)は欧米のPSCと病態が異なっていることが報告されており、特に膵炎を合併する場合高齢男性に多く、IgG高値、ステロイド治療に反応するなど自己免疫性膵炎と病像が一致している。本研究において従来PSCとして診断された症例の中には自己免疫性膵炎の胆管病変が含まれていた可能性を示唆し、これらは本来のPSCと区別すべきであると考えられる。
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