hepatocyte growth factor(HGF)は、傷害局所でHGF activator(HA)により活性化される。最近HGF activatorの作用を特異的に抑制するHGF activator inhibitor-1および2(HAI-1およぴHAI-2)が単離された。HAは主として肝細胞で産生されており、一方、HAI-1は消化管などで発現が認められるが、正常の肝臓では発現がみられない。肝疾患におけるHAI-1の発現は検討されていないので、今回、我々は肝硬変およぴ肝癌におけるHAとHAI-1の発現を免疫組織化学的に検討した。肝硬変(LC)を伴った原発性肝癌(HCC)16例、肝硬変6例および慢性肝炎(CH)9例を対象としてHAとHAI-1の免疫組織染色を行なった。その結果、CH、LCおよびHCCの患者肝組織において肝実質細胞がHAの免疫染色で陽性であった。また肝癌組織でもHAは陽性であり、非癌部肝細胞とほぼ同様の染色性が認められた。一方、HAI-1は16例の肝癌組織中6例で陽性であり、肝癌以外の肝組織では陽性細胞はみられなかった。肝癌組織におけるHAI-1の染色性と血清AFP値との関係を検討したところ、AFP値が400ng/ml未満の肝癌ではHAI-1陰性が多く、400ng/ml以上の症例に陽性例が多かった。さらにノーザンブロットを行ったが、免疫組織化学で陽性の癌部においてHAI-1 mRNAの発現が確認された。HAは肝細胞だけでなく肝癌組織にも発現しているが、HAI-1は肝癌組織特異的に発現していた。HAI-1陽性例はAFP高値の症例に多く、発癌や癌の浸潤にHAI-1が関連している可能性が考えられる。
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