研究概要 |
無症候性脳梗塞における血清ホモシスチン値の検討 メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素遺伝子の異常遺伝子保有、及び葉酸、ビタミンB12、ビタミンB6の摂取不足などにより血清ホモシスチンは高値を示すことが知られているが、この高ホモシスチン血症が血管障害、深部静脈血栓症、脳梗塞など血管病変のリスクになることが近年報告されている。小児の疾患であるホモシスチン尿症は含硫アミノ酸代謝経路における種々の代謝遺伝子欠損がその原因であるが、実際に若年性の心筋梗塞や脳梗塞を発症することから、ホモシスチンの直接的な血管への関与が示唆されている。今回我々は65歳以上の正常高齢者の結成ホモシスチン値を測定し、無症候性脳梗塞との関連を検討した。 65歳以上の正常高齢者160人(平均年齢76.4歳[66-88歳])についてELISA法により血清ホモシスチン値を測定し、頭部MRIで脳梗塞の有無を検索した。 7例は心房細動が認められたため解析から除外し計153人を検討した。そのうち38人(24.8%)に少なくとも1つ以上の脳梗塞が認められた。その多くは皮質下の白質か基底核領域の梗塞であった。脳梗塞群は非脳梗塞群に比し有意に血清ホモシスチン高値を示した。(13.6±4.1vs.11.0±3.3μmol/L,P<0.0001)。その他、年齢・性・高血圧・喫煙・アルコール摂取・血清クレアチニン値が梗塞群と非梗塞群で統計学的に歳が認められた。 無症候性脳梗塞が症候性脳梗塞に移行するかは今後のフォローアップが必要であるが高ホモシスチン血症は無症候性脳梗塞の独立した危険因子となり得る。またビタミンB12や葉酸と相関をもつことからこれらの補充により血管病変の進展を抑制し得る可能性がある。
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