気管支喘息患者の気道では一酸化窒素(NO)が過剰に産生されており、このNOは主に活性窒素類に変換されて気道炎症に影響をおよぼすと考えられるがその詳細は不明である。本研究では誘導型のNO合成酵素(iNOS)に選択的な阻害である N-[3-(aminomethyl)benzyl]acetamidine(1400W)の前投与、或いはiNOSの遺伝子欠損マウスを用い、内因性のiNOS由来のNOのアレルギー性気道炎症における役割を検討した。 卵白アルブミン(OVA)感作マウスに0.5%OVAの吸入を1時間ずつ1日2回行う方法により抗原曝露を行った。OVA吸入24時間後に、メサコリンの静脈内投与に対する有意な気道過敏性亢進および気道に浸潤した好酸球数の増加を認めた。iNOSに対する免疫組織学的検討からOVA吸入24時間後ではiNOSは主に気道上皮細胞と一部の浸潤した炎症細胞に認め、western blot法による蛋白定量でもiNOS蛋白の気道での増加を認めた。1400W持続投与はOVA吸入による気道過敏性更をほぼ完全に抑制し、好酸球の浸潤に関しては一部抑制した。iNOS欠損マウスでは免疫組織学的検討より活性窒素類産生の指標であるニトロチロシンの産生は抑制されたが、気道過敏性、好酸球浸潤に関しては抑制されなかった。 以上の結果より、我々のマウス気管支喘息モデル(アレルギー性気道炎症モデル)でiNOSおよび活性窒素類は増加し、活性窒素類の産生はiNOS由来のNOに依存していることが明らかとなった。一方、遺伝子欠損マウスを用いた検討ではiNOSの選択的阻害剤の場合と結果が異なっており、様々な代償機構が働いた可能性を含めた今後の検討が必要と考えられた。iNOS選択的阻害薬は気管支喘息に対する治療への新たな戦略の一つとなる可能性が示された。
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