研究概要 |
多くの検体を迅速、正確、安価に処理できる技術の確立を図るため、本研究では「生活習慣病の遺伝子多型解析のための技術革新」を目的としている。本年度も共同研究施設へのDNAマイクロアレイ装置の導入が見送られたため、TaqManケミストリー法を応用したASO(allele specific oligonucleotide hybridization)による半自動遺伝子型決定法の確立を中心に検討した。本法では、プライマーとプローブの設計と、至適温度条件の設定が最も重要であり、極端にGC richな領域や単塩基の連続した配列には不向きであることが判明したが、本法のランニングコストは、ゲル電気泳動が不用で、制限酵素処理も必要としないことから、むしろ従来の制限酵素断片長多型よりも安く、1検体あたり50〜100円程度、実験時間は約1/10に短縮可能であった。500検体をPCR-RFLPとTaqMan PCR法の両者で検討した結果、1例の相違も認められず、再現性、信頼性は良好であった。アンジオテンシノーゲン遺伝子(AGT)のT235アリルは高血圧感受性を高めることが知られているが、我々はこれと完全な連鎖不平衡にあるAGT/T+31C多型を4,000人規模の一般集団で検討し、同多型が高血圧家族歴と関連があることを示した(Hypertension,2001,in press)。岩手県で実施中の農村部地域住民の大規模コホート研究では、東北大学倫理委員会の承認を得て、24時間血圧変動と関連する遺伝因子、高血圧に起因する合併症と関連する遺伝因子をTaqMan PCR法を用いて検討中であり、同多型がnon-dipper型と関連することや、無症候性脳梗塞と各種遺伝子多型が血圧とは独立して関連することなどの検討結果を得ている。
|