研究概要 |
1)これまで、我々はラット脳より神経細胞を取り出し、ニスタチン穿孔パッチクランプ法を適用しイオン電流を計測する条件を決定し、成果を得ており(M.Munakata et al.Brain Research,1998,800,282-293)、実際のヒト切除脳標本にて、安定した記録をとるため、種々の改良を加えているが、これまでのところ、再現性のある、形成異常組織に特異的なチャンネル機能の異常を検出するまでには至っておらず、ラットでの検討を平行して進めているので、その結果を報告する。Phenylethylamine(PEA)はmicroamineの一種でADHD児において尿中、血清における濃度が低下していることが報告されているが、その大脳皮質神経細胞に於ける電気生理学的作用についてはよく知られていない。幼弱ラット大脳皮質神経細胞にて、PEAの中枢神経細胞に対する作用を電気生理学的手法により検討した結果、PEAは用量依存性に皮質神経細胞に細胞内向き電流を発生した。またGABA投与に伴う電流には変化を及ぼさなかったがI-Aspartate投与に伴い発生した内向き電流には用量依存性に抑制する傾向が見られた。従ってPEAはNMDA受容体活性化による電流を抑制すると考えられる。又この効果は一過性に見られPEAの濃度の低下と共に速やかに消失するのが観察された。 2)形成異常組織のてんかん原性獲得に炎症のプロセスが関与しているかを検討するため、摘出組織中の血管における、接着因子(ICAM-1,VCAM-1,P-selectin,E-selectin)の発現を免疫組織学的に検討した。その結果、ICAM-1の陽性率のみが正常対象に比して、有意に上昇していた。このことは、炎症性のプロセスが同組織において、関与していることを示唆するものである。
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