In vitroにおける免疫応答の解析は著しい進歩をみせたが、実際生体に侵入した細歯・ウィルス・抗原に対する免疫応答がどこでどのように始まり、増幅され、終息していくかについての研究は極めて少ない。今回私たちは、Balb/cマウスに抗CD3抗体を静脈内投与して経時的に脾臓白色髄の細胞構築の変化を共焦点レーザーにて検討した。この結果、抗CD3抗体投与前には白色髄は中心にある牌動脈の分枝、その周囲のT細胞ゾーン、T細胞ゾーンを取り囲むB細胞ゾーンとその構築は厳密に二層に分かれていたが、抗体投与後6時間までには活性化されたT細胞がB細胞ゾーンへと侵入し、T/B細胞の混合像を呈した。その後T/B細胞は白色髄から赤色髄へと移行し、白色髄内は24時間以内に抗体刺激前のT細胞ゾーンとB細胞ゾーンとに明確に区別される状態に立ち戻った。活性化し赤色髄へ移行したT/B細胞は、解剖学的には牌静脈を流れ門脈・肝類洞を経て、肝静脈から全身循環へ入ることになる。肝類洞にはKupffer細胞が集族しており、脾臓由来のT/B細胞とマクロファージ機能をもつKupffe細胞との相互作用により、全身免疫系の活性化が達成される可能性が指摘された。現在エルトリエーターを用いて肝細胞とKupffer細胞とを分離し、Kupffer細胞と脾臓由来T/B細胞との間の抗原情報の授受について検討をすすめているが、肝・脾を軸とした全身性免疫反応の増幅過程について研究できる手段を入手したことになる。
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