研究概要 |
本研究において我々はロリクリンの変異が角化細胞のアポトーシスに及ぼす影響を細胞生物学的アプローチにより明らかにする。平成11年度において我々はロリクリンの遺伝子変異によっておきる魚鱗癬を伴うVohwinkel症候群を日本人患者で初めて同定した(J Dermatol Sci 19:44-47,1999)。角化細胞の終末分化はアポトーシスに特徴的な核DNAの断片化を伴うことを電顕レベルのTUNEL法を開発することにより証明した(J Histochem Cytochem47:711-717,1999)。また角化過程においてロリクリンの抗原エピトーブはデスモゾームのアタッチメントプラーク部分においてマスクキングを受けることを発見し、これが蛋白分解酵素処理により賦活化されることを見いだした(Exp Dermatol 8:402-406,1999)。さらに、ロリクリン変異によって生じる角化異常症(ロリクリン角皮症)に特有の変異ロリクリンを認識する抗体を作成しその蛋白局在を検討したところ、核小体に集積し、その後核内に拡散することを見いだした(J Invest Dermatol 112:551,1999)。これは変異ロリクリンのもつアルギニンにとむアミノ酸配列が核、及び核小体移行シグナルとして働いていることを示唆するものであり、変異ロリクリンが核機能を傷害することにより表皮角化細胞の分化に伴う細胞死の過程を障害、ロリクリン角皮症が生じると考えられた。
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