研究概要 |
(1)異時性の撮像によるMRI画像信号の比較を可能にするため、送信パルス強度法による臓器、病変のMRI信号強度補正をおこないその精度を評価した。(2)画像の信号強度が送信パルス強度(TRA)に反比例する理論により、画像上の信号強度(S)にTRAを乗じ、バックグラウンドノイズで除した値を補正値(準MR値=pMRL)とした。(3)超伝導MRI装置Simens Magnetom Vision(1.5T)によるPVAゲルファントムの測定ではSの信号偏差値±12.1%(SD)が、pMRLでは0.85%(SD)となり、補正値の安定性はTRA測定誤差のレベルにまで補正された。(4)頭部コイルを用いた人体正常脳の信号計測ではSが視床±6.0%(SD),白質6.8%(SD)であったのに対し、補正値pMRLは視床±3.1%(SD),白質±4.3%(SD)と改善した。(5)体幹用コイルでの測定では人体肝臓実質の信号はS8,S4でSが18%SDに対しpMRLが3-6%と補正された。(6)小児正常脳のT2強調画像での白質信号強度の計測(n=12)ではS値は年齢によらずばらつきを示したが(相関係数-0.46,-0.44)、pMRLにより髄鞘化にともなう加齢による信号低下がしめされた(相関係数-0.94,-0.91)。また、白質ジストロフィーによる脳病変では有意な信号強度上昇が示された。 (7)肝機能異常に対する評価として、正常肝のクッパー細胞にとりこまれ信号低下をきたす鉄造影剤(SPIO)の投与による影響を測定したが、血液データ上の肝機能正常例(n=5)では信号変化が7.5%平均低下したが機能異常例(n=2)では1.4%の低下にとどまり、造影剤による信号変化が機能異常と相関する傾向をしめした。(8)本信号補正による数値の相関は同一の装置、プロトコールによる画像間に限られるが、病態の半定量的評価に応用が可能な方法と考えられる。
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