○本研究ではラットにKDH-8肝癌細胞を植え込んだ腫瘍モデルと、ブドウ球菌移植の感染およびテレビン油塗布の感染・炎症モデルを作成できた。各々のモデル動物にサイクロトロンおよび自動合成装置で合成されたF-18標識フルオロデオキシグルコース(FDG)を投与した結果、すべての病巣にC-14-FDGの強い集積のあることが確認できた。この集積は感染・炎症モデルよりも腫瘍モデルの方が明らかに高いことが確認された。このことより、FDG集積の定量的解析により腫瘍と良性疾患との鑑別がある程度可能であることが示唆された。 ○FDG集積機序を解明するため、凍結切片において膜の輸送遺伝子である5種類のグルコーストランスポーター(GLUT)を免疫組織染色したところ、腫瘍巣においてGLUT1の発現が増加していたが、GLUT3-5は発現していないことが確認できた。他方炎症モデルではGLUT1とGLUT3の両者の発現が強かった。この点から悪性腫瘍と炎症との鑑別にはやや難があると考えられた。 ○炎症組織においてインスリンおよびグルコースを負荷した際のFDGの集積の変化を検討した。炎症巣への集積はどちらの負荷とも有意に低下したが、血液の放射能濃度が著明に低下するため、組織と血液の放射能の比は上昇した。この変化を詳細に検討することで炎症巣の病態、さらには腫瘍との鑑別に役立てられるものと考えられた。
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