これまでの家兎を使った動物実験では、注入した微小球の大部分が、組織標本作成時に欠落し、残存した微小球でさえ周囲組織に大きな損傷を与えていたために、微小球と周囲正常組織との関係を評価することが困難であった。今回、MMA樹脂包埋法による研磨標本作成を導入することにより、周囲組織を損傷することなく正常腎組織内の微小球を観察することができた。 本年度の実験の目的は、SiO_2微小球を腎動脈本幹より動注し、SiO_2微小球の正常組織内での分布と経時的組織変化を検討することであった。 家兎腎動脈本幹から100mgの微小球を動注したのち、1日後、3日後、1週間後、8週間後に家兎を堵殺し、右肺と両側腎を摘出して腎組織を観察した。 結果として、それぞれの腎組織内での微小球到達部位は、腎糸球体直前の細動脈(直径20-30μm、これはSiO_2微小球と同等の大きさ)であり、糸球体毛細血管系への流入は確認されなかった。観察期間に応じた(順に炎症細胞浸潤、腎皮質末梢部のみの壊死性変化、楔状の壊死性変化、広範囲石灰化・壊死等)塞栓効果が確認された。また8週目の観察群でさえ変性した組織内にSiO_2微小球の貯留が観察された。なお、同時に摘出した右肺と非動注腎内へのSiO_2微小球の逸脱は認められなかった。 これまで、様々な微小球の臨床応用と動物実験の報告がなされているが、微小球そのものの組織内分布の評価や逸脱を報告したものは見あたらず、今回のMMA樹脂包埋法による組織内微小球の観察は画期的と言える。 現在、家兎肝臓を夕一ゲットとした動物実験を展開中で、すでに肝内では、グリソン鞘内の小葉間動脈まで微小球が到達することと、毛細血管系(類洞)ヘの流入が無いことを確認済みであり、次年度には、定量的な肝内分布の評価とVX2腫瘍移植肝での腫瘍/正常比の同定が期待される。
|