逐次遺伝子解析法(SAGE法)は、遺伝子を13-14塩基程度の短い配列(タグ)で代表させて、数千から数万種類の遺伝子発現を効率的に定量解析できる手法であり、低線量放射線影響を分子レベルで包括的に解明できる可能性をもっている。データベースの公開も進んでおり、既知遺伝子の放射線応答を解析するのにも適していると考えられる。一方、短い配列のためデータベースにない新規遺伝子を解析するのには難点があった。SAGE法で得られるタグの長さは、IIs型制限酵素とII型制限酵素の組み合わせにより決まるが、主としてIIs型制限酵素により決定される。 我々は、グラム陰性菌の一種であるMethylophilus methylotrophusより、IIs型制限酵素の一つであるMmeI活性を簡便にかつ迅速に抽出する方法を開発した。過去の報告では不安定であり、応用例の報告はなかったが、抽出法の改良により安定な作用条件を検討することができた。このMmeIをSAGE法に応用することにより従来13-15塩基であったタグを、21-25塩基に延長することに成功した。21塩基のタグは、PCRプライマーとしてほぼ充分であり、PCRにより元のcDNAの遺伝子情報を容易に得ることが可能であることを示した。従来のSAGE法は、短いタグで遺伝子情報を代表させるため、既知の遺伝子情報が不可欠であった。しかし、本改良法を用いれば、簡易なESTデータベースを効率的に作成することができるため、従来データ解析が進んでいない真核生物の遺伝子解析をも容易にすることが期待できる(現在、投稿中)。これらの手法を用いて、新規放射線の応答遺伝子についてもSAGE法と合せて、検索中である。
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