研究概要 |
フルオロミソニダゾール(FMISP)を基本分子として,生体膜を容易に通過し細胞内酸化還元反応に高い親和性と選択性を有する機能分子ライブラリーの構築に着手した。側鎖構造に脂溶性アルキル基を持つFPN,FONの高脂溶性類似体に加え,イミダゾール環に電子吸引性基を導入したいくつかの分子構造を新たに考案し,MOPAC-PM3計算法を用いて疎水性およびLUMOエネルギー準位を予測した。この結果,4-BrFPN(logP=1.6,LUMO=1.18eV),4BrFMISO(logP=1.2,LUMO=1.11eV),BenzFPN(logP=1.9,LUMO=1.3leV),BenzFMISO(logP=1.4,LUMO=1.3leV),5COOMe-FPN(logP=0.8,LUMO=1.51eV),5COOMe-FMISO(logP=0.5,LUMO=1.49eV)はFMISO(logP=0.4,LUMO=0.96eV)よりも高い疎水性と電子親和力を有すると予想された。 このうち4BrFPNの^<18>F標識合成に成功し,トシル体を前駆体としてK^<18>F/Kryptfix222と求核置換反応を行うことで,全合成時間40分,放射化学的収率33%で^<18>F標識4BrFPNを得る合成法を確立した。基礎評価の結果,4BrFPN(logP実測値1.1)はその低酸素細胞に対する放射線増感効果(SER=1.65)からFMISO(SER=1.60)と同等の電子親和性を有する事が示唆された。動物を用いたインビボ評価の結果,4BrFPNは速やかに脳に移行し,また固形腫瘍への集積選択性がFMISO,FPN,FONに比べてやや高い事などが明らかとなり,低酸素細胞内での代謝トラップ反応が改善された可能性が期待できた。さらにLUMOエネルギー準位が低い類似物について合成と評価を検討予定である。
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