研究概要 |
この研究によって、私達は(1)apoE4蛋白が神経細胞株F11において細胞死を誘導すること、(2)apoE4蛋白誘導性の神経細胞死はLRPを介すること、(3)同細胞死は百日咳毒素感受性G蛋白Giを介することを明らかにした。apoE4蛋白が誘導する細胞死は、リピッドフリーのリコンビナントapoE4蛋白でも誘導され、180bpのDNA断片化を伴う典型的なアポトーシスである。リコンビナントapoE4が誘導する神経細胞死は、天然の精製apoE4やapoE4遺伝子導入に基づいて分泌されるapoE4より弱く時間も長くかかった。apoE4蛋白誘導性の神経細胞死は、活性型α2マクログロブリンで抑制され、非活性のα2マクログロブリンでは抑制されなかった。同細胞死は更に、アンチセンスLRPオリゴヌクレオチドにて抑制された。更に又、apoE4誘導性細胞死は、LRPのapoE蛋白への結合を阻害するRAP添加によって抑制された。これらのことから、apoE4蛋白誘導性の神経細胞死はLRPを介することが明らかになった。apoE4蛋白誘導性の神経細胞死がGiを介する実験は以下のように行った。まず、百日咳毒素処理F11細胞では、apoE4の誘導する細胞死は著しく抑制された。この抑制は、不活化百日咳毒素には認められなかった。次に、F11細胞に百日咳毒素抵抗性変異を有するGi1,Gi2,Gi3,Goの各αサブユニットのcDNAを導入し、百日咳毒素を処理したところ、Gi1,Gi2,Gi3変異体を発現した細胞ではapoE4による細胞死は再び現れたが、Go変異体発現細胞では細胞死は抑制されたままであった。これらの結果は、apoE4による細胞死は、Gi1,Gi2,Gi3が介在し、Goは介在しないことを証明している。今後LRPが神経細胞死を誘導する細胞内ドメインなど分子機構を明らかにする方針である。
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