研究課題/領域番号 |
11877188
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山崎 義光 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (40201834)
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研究分担者 |
藤谷 与士夫 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
松久 宗英 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
梶本 佳孝 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (60301256)
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キーワード | p21 / 酸化ストレス / 2型糖尿病 / 膵β細胞障害 / インスリン生合成 |
研究概要 |
インスリン非依存糖尿病(NIDDM)においては病状の進行に伴い膵β細胞数が減少する。高血糖が引き起こす種々の反応の中でも、非酵素的糖化反応(グリケーション)に伴って産生される活性酸素は糖尿病状態において認められるβ細胞障害に関与する可能性がある。そうした中で申請者は最近、活性酸素を介したβ細胞障害に細胞周期制御因子p21が関与することを示唆する知見を得た。すなわち活性酸素を培養β細胞株に負荷するとp21の発現が増加し、それに伴って細胞周期の抑制とインスリン遺伝子の発現低下が認められた。そこで本研究では、p21の発現誘導が、MIDDM患者におけるβ細胞数減少およびインスリン生合成低下に関与する可能性につき検討を加えた。 平成11年度は、糖尿病進行に伴う細胞周期制御因子p21の膵ラ氏島における発現量の検討をおこなった。すなわち、糖尿病モデルラットであるZDF(Zucker Diabetic Fatty)ラット(肥満、慢性高血糖に伴いインスリン合成、分泌の低下、β細胞減少、線維化が認められる)と、そのやせ型コントロールのZLC(Zucker Lean Control)に対し、週齢を追って膵ラ氏島におけるp21mRNAの発現レベルを測定した。6週齢ではZDFラット、ZLCラットはともに高血糖は示さず、12週齢ではZDFラットのみが糖尿病を発症し高血糖を示す。このとき膵ラ氏島におけるp21mRNA量は、12週齢のZDFラットにおいてのみ有意な高発現を認めた。またインスリン遺伝子のmRNAは12週齢のZDFラットにおいてのみ発現量の低下を認めた。 以上の結果より、糖尿病の発症、高血糖の発現にともなって、膵ラ氏島におけるp21遺伝子の発現量が増加する事が示された。またこれがインスリン遺伝子発現低下を招いていることが示唆された。平成12年度はインスリン遺伝子発現に対するp21の作用機構を明らかにするため、1)アデノウイルスベクターを用いて、培養β細胞株にp21遺伝子を効率よく大量に発現させてインスリン遺伝子の発現がどのように変化するかを検討し、2)さらにp21がどのようなメカニズムで(どのようなシスエレメントを介して)インスリン遺伝子発現を抑制するかをゲルシフトアッセイ(electro-mobility shift assay;EMSA)およびレポーター遺伝子解析にて検討する予定である。
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