研究概要 |
治療では、リアルタイムに生体機能をモニターし把握が望まれるが、血中の微量の生化学物質のリアルタイムなモニターは困難である。そこで水晶発振子の安定性が発振子表面に付着した物質の質量により発信周波数が変位する現象(microbalance)と、敗血症の際に見られる血中エンドトキシンがポリミキシンBと特異的に結合する性質を利用し、血中のng/dlからpg/dlの単位の微量物質の計測法の開発を行った。解決すべき点として1),血中で水晶発振子が安定に、持続した発振を持続できること、2)水晶発振子の周波数は、付着物以外に血液の粘性や温度の影響も同様に受けるため、これらの影響を除去しなければならないこと、3)目的とする物質と選択的に結合する結合物質を水晶発振子表面に固定化する技術の開発がある。1)の点に対しては、アクティブな発振回路の導入で解決出来ることが判明した。2)の点に関しては、差分法を導入することで解決可能であることが判った。つまり対照として結合物質を固定しない水晶発振子を同じ測定環境に同時に置き、結合物質を固定化した水晶発振子の計測結果との差をとれば温度や粘性などの影響は除去できる。差分法では血液という伝導性物質に取り囲まれた環境に二つの発振子が存在することになり、互いに電気的な影響を及ぼすことが判明した。このため数秒間隔で発振時期をずらせて同時に二つの発振子が動作しない方法をとることで差分法を導入することが可能であることが判明した。3)の点に関しては水晶表面の金電極と3,3'dithiodipropionic acidを反応させ、アミノ結合で蛋白質やポリミキシンBの導入を試みた。3)に関しては未だ安定した結果が得られず、表面プラズモンセンサーで使われているcarboxymethylated dextranコーティングの水晶発振子に応用しアミノ結合を導入する方法を現在継続して検討中である。
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