研究課題
本年度は、消化管の平滑筋(輪状筋、縦走筋)及び粘膜、漿膜を含めた各層の幾何学的変化が我々の考案したインピーダンススペクトロコピー(IS)法により計測可能であるかまず、イヌを用いて実験的に検討した。その成績から、消化管各筋層が我々の仮説したような等価回路とみなすことが出来るかについて検証した。そのため、まず消化管に接触させてインピーダンス測定を行うための端子を考案した。今回は白金電極四端子法を用いた。この方法では外側二端子から交流電流を与え内側の二端子間の電位差からインピーダンスを求めるため電極インピーダンスが消化管運動に与える影響がほとんどなく、測定対象物のみのインピーダンスを得ることが出来る。その後横紋筋組織の等価回路を参考にして平滑筋組織の電気化学的等価回路Zec(W)を構築した。同時に輪状筋方向、縦走筋方向にに配向する筋細胞の数学的モデルからえられる電気化学インピーダンスモデルZt(w)を測定しZec(w)と結びつける。実験からえられたZe(w)をZec(W)ととともに非線形最小二乗法(CNLS)を用いて等価回路を構成する各成分を決定し各筋層の運動評価を試みた。また、通電周波数については生体組織構造機構に支配されるβ相(10k〜数MHz)を用いた。その結果、これまでに以下の知見が得られた。1)各筋層の構造を示す周波数帯は80k〜220kHzであった。これは従来横紋筋で得られたデータとほぼ同様の値であった。2)平滑筋を強制的に変形させることによりインピーダンス軌跡は変化し、電極配向によりその変化特性が異なった。以上から、十分に本法は原理的、実用的にも消化管平滑筋の各層別運動特性を評価できる可能性が示された。来年度は、さらに、詳細に強制変形のみならず自発変形時の違いや、炎症などの障害時の変化さらに括約筋部の特性検討を行う予定である。