研究概要 |
目的:本研究の目的は心膜の代用物として吸収性素材である架橋ゼラチンシート、乳酸-カプロラクトン共重合体シートを用い、術後遠隔期の癒着の程度をexpanded-polytetra-fluoroethylene(e-PTFE)シート、自己心膜で閉鎖した群と比較することにある。平成11年度中に以下の実験を48頭に施行した。 実験方法:雑種成犬を心膜再建モデルとして使用し心膜欠損部の閉鎖に用いた補填物により以下の4群に分類した。A群:自己心膜、B群:架橋ゼラチンシート、C群:乳酸-カプロラクトン共重合体シート、D群:e-PTFEシート。麻酔はsodium thiopental の静脈麻酔で導入し、気管内挿管後、調節呼吸とした。麻酔の維持はhalothaneに適時sodium thiopentalを加えて行った。手術手技は右第4もしくは第5肋間開胸で行い横隔神経の前方約1cmの部位の心膜を3×3cmの正方形に切除し心膜欠損孔を作成する。欠陥孔にあらかじめ採取しておいた血液を5ml散布し上記4方法で閉鎖した。閉鎖は非吸収性合成糸のマットレス縫合4針にて行った。それぞれ術後2週、4週、12週、24週時に各群1頭、3頭、5頭、3頭ずつ屠殺し、癒着の程度を肉眼的に心外膜側と胸膜側について0〜3の4段階評価を行った。肉眼的評価の後、組織を採取し、hematoxylin-eosin染色、elastica-masson染色を行い急性炎症所見、慢性炎症所見、線維化の程度、吸収素材吸収後の組織反応に対し組織学的な検討を加え、0〜3の4段階に評価した。 結果:1.心臓と胸膜との癒着はB,C群がA,D群に比して軽度の傾向があった。2.B,C群の吸収性素材は術後24週以降吸収され線維性膜様組織と置換された。 中間報告における結論:吸収性素材を用いた心膜再建は癒着が軽度でまた術後中期〜遠隔期に吸収され異物として残存しないことより有用な方法と考えられた。
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