研究の目的:近年、中枢神経、特に脊髄の欠損を再生させる研究の報告が多いが、いずれも脊髄組織、末梢神経等の生体材料を移植した報告である。生体材料は、未知の病原体による感染、拒絶反応、採取部の犠牲等問題も多く、臨床での使用は困難な場合も多い。人工材料の場合、上記の欠点を克服することは可能である。今回われわれは、人工材料にて脊髄再生を試みるため、新規に共有結合架橋による凍結乾操アルギン酸スポンジを開発し、利用した。 方法:生後8-12日の幼若ラットの脊髄を、第6-8胸椎のレベルで切除し、約2mmのギャップを作成した。ここに、凍結乾操アルギン酸スポンジを充填した。術後12週で、電気生理学的、組織形態学的に脊髄神経の再生、伸長を検討した。 結果:電気生理学的には、大脳皮質を電気刺激すると後肢の筋より誘発筋電図(MEP)が得られた。さらに、後肢を電気刺激すると、大脳より感覚誘発電位(SEP)が得られた。このSEP、MEPの波形は、正常ラットより得られたものに近く、また、正常ラットで、脊髄を切断すると、両者とも消失した。 組織学的には、ギャップ中央部では、移植したアルギン酸はほぼ吸収されていた。電子顕微鏡下で、様々な太さの有髄、無髄神経が見られた。ミエリンの厚さも様々で、ミエリン化途中の無髄神経も見られた。これら有髄神経は、シュワン細胞様の細胞と1対1の対応をなす、末梢神経型であった。
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