本研究では、未分化幼若細胞をドーパミン細胞へと分化誘導する物質である活性型sonic hedgehog(SHH-N)を遺伝子導入したグリア細胞(A1細胞)とのco-cultureにより、ラット胎児中脳未分化分散細胞がドーパミン細胞へと分化増殖していくかを先ず検討した。胎生11日目のラット胎児中脳分散細胞をA1細胞とco-cultureした群(A1群)と、中脳分散細胞を単独で播いた群(C群)に分け、各々をドーパミン産生細胞の特異的マーカーであるtyrosine hydroxylase(TH)に対する抗体で免疫組織化学染色した。A1群では3〜4日目でTH免疫陽性細胞から神経突起が出現し、成長してTH免疫陽性細胞を多く含む細胞塊(cluster)を形成し始め、その数・大きさ共にC群に比して有意に増加していった。また、7日目以降にはTH免疫陽性を示すclusterはお互いに密な線維連絡を取り合うほど、神経としての形態を獲得してきたのに対し、C群では線維連絡はほとんど認められなかった。この実験結果は、未分化幼若細胞である胎児期早期の神経細胞や、神経幹細胞をこのA1細胞と共にco-cultureした後に移植することにより、パーキンソン病に対する外科的治療としてのドーパミン産生細胞の脳内移植に、新たな、しかも豊富なdonorを開拓できる可能性を示唆した。さらに、現存のドーパミン産生細胞の移植に、A1細胞をco-graftすることにより、移植効果の増大をも期待させるものである。
|