平成13年度は、12年度に引き続き、11年度に開発した則定系・解析系を用いて、麻痺疾患よりデータ採取および解析を行った。また、患者へは充分なインフォームド・コンセントを行った。 対象は、41歳と67歳の女性2名で、どちらも乳がんの手術後に放射線療法を行い、その後、放射線ニューロパチーが生じている。上腕二頭筋の著しい筋力低下が見られており、閾値下電気刺激により一時的な筋力増強効果である促通現象が観察されている。本症例においては、両者とも最大随意筋力よりも電気刺激による誘発筋力の方が大きいことが観察された。 上腕二頭筋の等尺性収縮時の筋張力と筋電図を、閾値下電気刺激を条件として則定した。電気刺激は表面電極を用いて筋皮神経に行い、刺激強度は誘発筋電位が見られない強度に設定した。そして、同筋からの筋電図を表面電極により採取した。データは、フィルター処理を行った後、積分処理とDecomposition処理を行い、筋活動変化を観察した。 結果として、積分筋電量は増加していたが、リクルートメント閾値や運動単位の変化は見られなかった。また、治療的電気刺激として、1日15分を2回行い、3ヵ月後に筋力の増加が見られた。随意よりも電気刺激による筋力の方が大きいことから、H反射を利用して促通現象を起こしている可能性を検討したが、筋電図上は有意な活動電位は観測されなかった。 以上より、閾値下電気刺激は、感覚神経を介して何らかの求心性効果をもたらしていると考えられるが、その生理学的機序は未解決な部分が多いと結論付けた。
|