膝前十字靭帯損傷(ACL)損傷には、contactまたはnoncontact損傷によるものがあり、近年女性のnoncontact外傷によるACL損傷は、男性の2から8倍の率で有意に多いことが報告されている。その原因としては、構造的違い、関節弛緩性、大腿骨notch、筋力差や女性ホルモンの関与が考えられる。これらの要因の中で、我々は、女性ホルモンに着目した。我々は、本研究助成(胞芽的研究(180万円))を受け、正常女性の月経周期と、ACLの機能の関係を検討した(2000年第5回日韓整形外科スポーツ学会、日本臨床スポーツ学会にて発表)。この研究により、ACLは、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンが高濃度になる排卵期と黄体期に膝前十字靭帯の前方移動量が増加することがわかった。つまり、女性の月経周期で靭帯の弛緩性が変化することがわかった。しかし、靭帯の弛緩性が2週間で変化する原因が基礎的には不明であり、今後の検討が必要である。さらに、我々は、平成11年よりアンドロゲンレセプターおよびエストロゲンレセプターの発現を、ヒト半腱様筋腱と前十字靭帯、さらに再建前十字靭帯で検討し、再建術中および術後1.5年以降の再鏡視で、半腱様筋腱には、レセプターがなかったものの、前十字靭帯および再建前十字靭帯では、それぞれのレセプターの存在が確認した(未発表)。このことは、移植腱にこれらホルモンレセプターの発現時期を検討することで、移植腱の靭帯化を検討できると考え、現在さらなる研究を続けている。
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