研究概要 |
「臨床研究」 :高齢者三叉神経痛のうち、合併症を持つため脳外科手術の対象とならない症例に神経ブロックを行った。なお、半数の患者は,過去にアルコール(100%エタノール)を用いた神経ブロックを受け、その部位に感覚障害を認めた。今回の治療では、0.5%ブピバカインで眼窩上または眼窩下神経ブロックを行い、その効果を認める有効期間が短い場合、1週間以上の間隔をおいて4%テトラカインを用いて神経ブロックを行った。神経ブロックの鎮痛効果と感覚障害程度とともに、末梢神経検査装置(ニューロメータ)を用いて損傷神経の種類を鑑別した。 過去にアルコールブロックを受けた部位は1年以上を経過しても感覚は低下しているのに対して、今回行った4%テトラカインのブロックでは、1月以内に感覚を正常化した。ニューロメータの閾値を比較すると、アルコールブロックを受けた部位の250Hzと5Hzの閾値は有意に高く、不可逆性の神経損傷が生じていることが確認された。4%テトラカインでは非ブロック側と差がなく、鎮痛効果は3ヶ月以上持続した。 「基礎研究」 :高濃度局所麻酔薬(テトラカイン)の再生神経組織への影響を、E7 Chick embirio神経組織の初代培養系を用いて検討した。同じ個体より摘出した、網膜、背側神経核、交感神経核を24時間培養し,その後各種濃度のテトラカインに培養組織を曝露した. 各神経の突起先端部(成長円錐)は濃度依存症に形態変化を来し,一部は不可逆的であった.神経突起も結節状の部位を形成する形態変化を来し,長時間の暴露後では細胞体にも及び、アポトーシスと思われる形態を示した.
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