研究概要 |
目的:膜型人工肺の酸素加能を改善し人工肺の小型化、耐久向上をはかるため、人工肺気相に大気圧以上の圧をかけて酸素を吹送する新しい高圧換気の有効性を調べた。方法:緻密膜中空糸外部潅流式人工肺(膜面積0.4m^2)の気相へ毎分3.5リットルの酸素を吹送し、気相出口に可変方式呼気終末弁を接続して、気相内圧を大気圧、大気圧+100Torr、大気圧+300Torrの三段階に調節した。保存期間超過廃棄処分のヒト濃厚赤血球液を、37℃、ヘマトクリット35%、酸素飽和度60%、二酸化炭素分圧40Torrに調節し静脈血として人工肺液相へローラポンプで潅流した。人工肺酸素移行量は、ヘモグロビン値、人工肺出入口血液酸素分圧較差、血流量から計算で求めた。結果:人工肺気相陽圧が+0、+100、+300Torrと上昇するとともに、酸素移行量は163±10、196±13、251±5ml/分(mean±SD、n=6)と有意に増加した。気相内圧を±300Torrにしても血液中に気泡は認められなかった。雑種成犬にV-Aバイパスの体外式肺補助を行い膜型人工肺気相に陽圧をかけた。in vivoのテストと同様に容易に人工肺出口血液の酸素分圧は上昇した。しかし,脱血静脈血の酸素レベルは,in vitroテストの静脈血より高いので、酸素移行量が多くなると人工肺出口血液酸素分圧は急速に上昇して過飽和状態となり気泡を生じた。また、何らかの理由でローラポンプが停止すると人工肺内の血液に多数の気泡が生じた。結語:緻密膜中空糸外部潅流式膜型人工肺気相に陽圧をかけると酸素移行量を容易に増やすことができる。しかし、血液相ガス分圧総和が大気圧を超えると容易に過飽和となり気泡を生じる。
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