目的:水中で発生させた衝撃波を細胞浮遊液集束し照射すると、細胞表面に微小な小孔を短時間生じさせることをこれまで報告してきた。この現象を用い、ヒト細胞内に遺伝子を導入する事を本課題の目的とした。 方法:衝撃波源は球殻状のピエゾ素子を用い、水槽内で底面が平坦な薄いポリエチレンフィルムの試験管内に浮遊癌細胞を入れて衝撃波を照射した。水槽内には脱気水を満たし、焦点部に試験管底部を置いた。焦点部における焦点強度は16〜20MPaで、毎秒5回、2000〜4000回の衝撃波を照射した。癌細胞としては主にヒト胃癌細胞(GCIY)を用い、浮遊液中に混じる遺伝子ベクター及びアッセイ系としてβ-galactosidase reporter gene system(LacZ gene)とGFP(green fluoroscein protein)reporter assay systemの2つの方法で検討した。 結果:衝撃波を照射しないコントロールでは、2つの方法すなわちβ-galactosidase活性および蛍光のいずれも認められなかったが、衝撃波を照射すると、2〜5%の細胞にこれらの遺伝子の発現が認められた。 今後の展望:今回の導入効率は高いとは言えないが、衝撃波により遺伝子導入が起こることが明らかになった。本法は非侵襲的で、時間的、空間的な制御性に優れているので、今後、微少気泡発生剤等を用いて効率の増強法について検討したい。
|