PSAは現在前立腺癌の診断およびその経過観察においてもっとも有用な腫瘍マーカーである。本研究の目的は、前立腺癌診断におけるPSAに変わりうる新たな腫瘍マーカーの開発とその有効性の検討にある。PSAは本来前立腺の腺管上皮細胞より分泌されるセリンプロテアーゼで、私たちは前立腺内で発現している新たなセリンプロテアーゼBSSP-6(hippostasin)のクローニングに成功した。ヒトおよびマウスの前立腺組織に発現するmRNAよりhippostasinをコードしているcDNAのクローニングを行ったところ、ヒトおよびマウスの前立腺に発現するhippostasinのopen reading frameはそれぞれ846bps、828bpsで、それぞれ282個、276個のアミノ酸より構成されており、今までに発見されているPSAを含めたほかのセリンプロテアーゼと同様、DSGGPVL、AAHCなどの特徴的なトライアングル構造を有していた。またHippostasinはプロ体として分泌され、プロセッシング酵素により活性型になることが判明した。ノーザンブロット分析を用いて、臓器別にヒトでのhippostasinの発現の有無を検討すると、泌尿器科領域では特に前立腺に強発現しており、わずかではあるが精巣にも発現が認められた。RT-PCR法を行いヒト前立腺癌細胞株であるLNCaP、PC-3、DU-145でのhippostasinの発現の有無を検討すると、ホルモン非依存性前立腺癌細胞株であるPC-3に多く発現していた。現在Hippostasinのモノクローナル抗体を作成し、血清中の測定システムを開発中である。
|