[目的]着床現象の解明や、臨床応用可能な新しい胚移植法となりうるかどうかの基礎実験を行う。 [研究成果]温度感受性ポリマーであるポリNイソプロピルアクリルアミドと1型コラーゲンで作製した人工細胞外マトリックスを利用し、性ホルモンに感受性があり人工子宮内膜として応用可能な、子宮内膜の3次元再構築体(スフェロイド)の作成方法を確立した。同様な方法を用いて絨毛癌由来細胞株BeWoを用いてスフェロイドの作製を試み、この多細胞凝集塊は培養液中にHCGを分泌し、子宮内膜細胞由来のスフェロイドとBeWo細胞由来のスフェロイドの共培養を行い両者は容易に接着する事が可能で、着床現象をin vitroで3次元的に再現できる培養系であることが明らかとした。 より、大きな子宮内膜の再構築体を作成するため、アスコルビン酸10ng/mlの添加により子宮内膜間質細胞が最も効果的に重層化することが、昨年までの検討で明らかとなった。しかし、細胞浮遊液単独では重層化した細胞をディッシュから剥離させることは困難であった。ガーゼを支持体としてI型コラーゲンのなかに子宮内膜間質細胞を包埋し、細胞層全体を剥離させた。細胞シート内には子宮内膜間質細胞が包埋されており、その上に子宮内膜上皮細胞を播種し、上皮細胞を被覆させ、in vivoの子宮内膜と類似した再構築体を作成することができた。今後、ホルモン感受性をはじめ、この細胞シートの機能をin-vivoの子宮内膜と比較検討する予定である。 また、胚の着床過程で重要な働きをする細胞外マトリックス分解酵素のうち、MT1-MMPの子宮内膜における発現には絨毛細胞との細胞間相互作用よりも液性因子が重要であることをRT-PCR、in-situ hybridization、免疫染色を用いて明らかとした。
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