研究概要 |
子宮頸癌の病巣組織の約80%にはヒトパピローマウイルス(HPV)が感染しており、子宮癌の病因にはHPVが関与している。一方、ウイルスに感染しながらも高度異型病変が消退する症例も観察されている。我々は子宮癌患者においてHPV抗原に対する細胞障害活性をもったT細胞を再活性化することが新たな治療法になり得ると考え、解析を進めてきた。まず、子宮癌患者の同意の下に得られた病巣組織よりDNAとmRNAを抽出し、逆転写酵素でcDNAに変換し、PCRのプライマーを設定し増幅して、ウイルスのタイプおよび、TCR、Fasリガンドのメッセージを検出した。次に、各患者の末梢単核球からgenomic DNAを抽出し,DNAタイピング法にてHLAクラスIとクラスIIを決定した。[結果]HPVタイプ16陽性子宮癌患者のアリル頻度を『癌患者VS健常人』として示す。HLA-DRB1^*0405:14.8%vs28.3%、DRB1^*0901:55.6%vs29.7%、DRB1^*1302:3.7%vs14.5%のごとく特定のクラスIIアリル頻度と癌病変に関連が認められた。また、127人の症例の内51人が病巣にT細胞の浸潤を示すTCRが陽性であった。この51人の病巣には41.2%にperforin、62.7%にはFasリガンドのメッセージが認められた。[考察]HLADRB1のアリル頻度と疾患が相関し、病巣にはCD4陽性細胞の細胞障害因子であるFasリガンドのメッセージが存在することから、パピローマウイルス抗原特異的細胞障害性リンパ球は、従来想定されていたCD8陽性T細胞よりもCD4陽性細胞が重要な役割を果していると考えられる。今後、クラスII分子(DRB1)とCD4陽性T細胞とに親和性を持つアミノ酸配列の決定が必要となる。
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