研究概要 |
蝸牛、ラセン神経節細胞の共培養を目指す過程で、ラセン神経節細胞の培養に有効な神経栄養因子についての新知見を得た。これまで後根神経節細胞、中枢神経系で神経細胞の保護的効果を有することが明らかになっているinterleukin-6(IL-6)についてラセン神経節細胞での効果を検討したところ、単離したラセン神経節細胞の培養48時間後の生存率を栄養因子を加えないコントール群に比し有意に上昇させることが確認された。この効果はすでにラセン神経節細胞に対して有効であることが明らかにされている代表的神経栄養因子であるneurotrophin-3(NT-3)とほぼ同等であった。またIL-6とNT-3の両者を加えた群ではさらに神経生存率が上昇した。この知見はすでに知られている他の神経栄養因子同士でもみられるもので、多種の栄養因子はそれぞれ相補的、ないしは相加的に効果を有するものと考えられた。またIL-6は受容体の一部が可溶性であることが知られている(soluble IL-6R)。このsolubleIL-6RをIL-6と共に投与した群ではさらに神経生存率が上昇することが確認された。これらの成果については「耳鼻と臨床」に掲載予定である。 蝸牛についても単独で器官培養に成功した。ある程度の形態を保ったまま数周にわたり培養することが可能になってきている。培養した蝸牛と単離後培養したラセン神経節細胞とのシナプス再形成が今後の課題である。他の神経系でシナプス再形成を誘発するとされるnetrin,neuroligin等の効果を今後検討していく予定である。
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