神経再生経路を検討するには神経軸索を可能であればその全長に渡ってtraceできることが望ましい。これまでNeurotracerとしてはHorseradish peroxidase whith agglutinin(HRP-WGA)などが用いられてきたが神経軸索全長に渡る均一なtraceは困難であった。われわれはLacZ遺伝子を組み込んだadenovirus vectorを用いて、ラット脛骨、腓骨、腓腹神経軸索切断部よりウイルスを感染させ、神経軸索でのβ-galatosidaseの発現を観察した。 脛骨神経と腓骨神経を用いて神経端側モデルにおける再生軸索の経路検討をおこなった。 【結果】1) traceは切片のみでなく、実体顕微鏡をもちいて摘出した全体標本そのもので可能であった。Trace可能であった神経軸索は脛骨神経では数〜数十%であったが、軸索はその一本一本が切断部から近位部まで均一に、かつ、明確に識別でき、腓骨神経や腓腹神経軸索には発色が認められなかった。また神経軸索の走行途中での分枝は見られず、走行経路は脛骨神経全体としてまとまっていた。Traceは脊椎前根、後根のレベルまで可能であった。 2) 染色された再生軸索は脛骨神経の中を通って、端側縫合部より腓骨神経内へ侵入するのが観察できた。しかし端側縫合部より末梢の脛骨神経に染色は見られなかった。また筋肉内へ埋没させた切断腓骨神経中枢部にも軸索染色が認められた。この軸索と先の端側縫合部へ再生している軸索との交通は確認できなかった。 以上のように、この新しいtracerによって神経再生経路の新しい知見が得られたが、さらに別の様々なモデルで神経再生軸索経路、および、分枝のおきるレベルを現在、検討している。
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