バイオフィルムは、細菌が物質表面への接触を起因として特殊な成分を合成し細菌薄層全体を被覆するため、細菌側のバリアーとして働き、抗免疫、抗薬剤などの機能を与える。う蝕や歯周疾患などの口腔の細菌性疾患は、堆積細菌塊下(あるいはバイオフィルムの下)で起こる。また、軟組織に感染細菌も病巣局所で微少コロニーを形成している。すなわち、歯科領域ではこの様な細菌塊あるいはバイオフィルムとしての機能解析が重要である。しかし、この様なバイオフィルムを実験的に作製するのは容易でない。 平成11年度においては、 1.人工的にバイオフィルムや細菌塊を形成する方法の検討。 作製された単菌種での人口バイオフィルムは、付着細胞機能分析装置(ACAS)を用い、その構造を解析すると共に、蛍光試薬を用いて構成細菌の生死の染め分け技術を確立した。さらに、複数の菌種での人工バイオフィルム形成と、分析を行う予定である。 2.人工バイオフィルム内pHの測定。 バイオフィルム内の代謝活動のモニターとして有効なpHの測定を、蛍光試薬を用いてACASで行い、砂糖消費時のバイオフィルム内pHの測定を行った。同時に、対照として用いるバイオフィルムを形成していない懸濁細菌の同様な測定を、蛍光ELISAリーダー、フローサイトメーター等を用いて測定系を確立した。微少箇所での測定が未だ困難であるため、その改良を行う。 3.高分子のバイオフィルム内通過。 抗生剤やタンパク質を用い、バイオフィルム内の透過性を検討した。バイオフィルム構成菌体の外側に産生された菌体外多糖体によってその浸透性が阻害されるが、時間と共に深部に達すると思われた。
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