研究概要 |
これまで口腔癌細胞のウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(u-PA)産生と浸潤能とが相関することを報告してきた. 今回,口腔癌細胞によってプラスミノーゲンから活性化されたプラスミンが口腔癌の浸潤,特に蛋白分解活性に与える影響について解析した.口腔癌細胞にプラスミノーゲンを添加するとプラスミノーゲンのプラスミンへの活性化が認められた.プラスミノーゲン存在下で培養された口腔癌細胞は,プラスミノーゲン非存在下培養された癌細胞に比べ,線維芽細胞の産生した細胞外基質蛋白を強く分解した.この蛋白分解活性はプラスミン阻害物質であるα2-アンチプラスミンで強く阻害されることがわかった.またプラスミノーゲン処理された癌細胞の細胞膜は不活性型マトリックスメタロプロテアーゼ2(MMP-2)活性化能を有し,このMMP-2活性化能がα2-アンチプラスミンで抑制されることも見いだした.このことから口腔癌細胞はプラスミノーゲンをプラスミンに活性化し種々の細胞外基質分解するほか,癌細胞膜上のプラスミン活性を亢進させ癌細胞や間質細胞の産生する不活性型MMP-2活性化することにより癌周囲細胞外基質を分解し細胞浸潤を亢進させていると考えられた.α2-アンチプラスミンが口腔癌細胞の蛋白分解活性や不活性型MMP-2活性化を阻害したことから,α2-アンチプラスミンによる口腔癌細胞の浸潤抑制が期待でき,現在,α2-アンチプラスミンのin vitro及びin vivoでの口腔癌浸潤に与える影響について解析を行っている.
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