研究概要 |
歯周病罹患歯肉中にヒト型ベータディフェンシン-2(hBD-2)のmRNA発現を遺伝子増幅法によって確認し,そのcDNAをクローニングした。その発現量は,炎症度の強さに比例する傾向があった。この遺伝子を,ヒトelongation factor-1のプロモーターと連結した哺乳動物系細胞用の発現プラスミドベクターに挿入した。これを用いて,ヒト口腔上皮由来細胞等にin vitro遺伝子導入を行い,hBD-2ペプチドの産生を免疫染色によって確認した。しかし,この産生量では,現在のところ抗菌性を発揮するにはいたらなかった。今後は発現量の増加のための改良が必要である。さらに,ラットを用いてin vivoでの遺伝子導入を試みた。hBD-2遺伝子の代わりにレポーター遺伝子を用いた。現在,その遺伝子発現を確認中である。さらに,導入および発現効率を向上させるために,海外の研究者(米国南カリフォルニア大学歯学部顎顔面分子生物学センター)の協力のもと,ウイルスを含めた新規ベクターの利用を検討中である。 一方,合成のhBD-2ペプチドを用いて,口腔内細菌に対する抗菌性を検討した。その結果,10%の血清存在下では,抗菌性を全く消失するが,ヒト唾液の存在下では,80%の唾液濃度であっても,抗菌性は70%程度保持されることがわかった。さらに,0.1mMの濃度のhBD-2は同濃度の塩酸ミノサイクリンと同程度の抗菌性を有していた。 また,hBD-2のプロモーターをクローニングした。これを口腔上皮細胞に導入してレポーター遺伝子の発現解析を行う準備が完了した。今後,口腔上皮におけるhBD-2遺伝子の発現に関与する転写因子を解析する予定である。
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