1.本研究では光線力学治療(PDT)における新しい光増感剤の開発を目的としてテトラフェニルポルフィリン骨格にマルトヘキサオースを連結した非イオン性の新しい水溶性ポルフィリンの合成し、これらのHeLa細胞を用いた光毒性試験を行った。 2.一本鎖から四本鎖までのマルトヘキサオース基を連結した構造異性体を含む5種類のテトラフェニルポルフィリン(TPP)はアセチル基で保護したヨウ化プロピロキシマルトヘキサオシドとメタヒドロキシテトラフェニルポルフィリンをDMF中K2CO3を用いたカップリング反応により合成した。また得られた生成物はCHCl_3/MeOHを容離液とした0.5mmシリカゲルPLCプレートを用いて分離精製可能だった(90%)。これらの脱アセチル化はCHC13/MeOH中、NaOMeを用いて容易に行われた(HexTPP1〜HexTPP4)。得られた生成物はいずれも非常に高い水溶性(10-3M)を示した。またその溶解度は、HexTPP1<HexTPP2<HexTPP3<HexTPP4と糖鎖の数に応じて増加した。 3.HexTPP1〜HexTPP4の光毒性についてHeLa細胞を用いて評価を行った。10-5Mの薬剤をHeLa細胞に2時間接触させた後洗浄し、500Wハロゲンランプ(λ>500nm)用いて8分間光照射を行った後、20時間培養した後の生細胞数の相対評価をMTTアッセイ法により行った。HexTPP2〜HexTPP4においてはほとんど光毒異性は見られなかったものの、HexTPP1において極めて高い光毒性を示した。細胞膜への取り込みは親水性と疎水性のバランスが重要であること、またHexTPP2aおよびHexTPP2bで光毒性に違いが見られたことから細胞への取り込みは分子サイズのみならず分子形態にも依存していることが示唆された。以上の知見は、糖質による効果的なPDT用光増感剤の設計の可能性を示す興味深い知見である。
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