研究概要 |
γ-シクロデキストリン(以下CDと略)を原料として,その一級水酸基を全てシリル基で保護した後,水素化ナトリウムで2級水酸基を活性化し次いで塩化ベンゼンスルホニルを反応させO-2のスルホニル化とエポキシ化を一挙に行い,二級水酸基側をすべてマンノエポキシドに変換した.この後シリル基を脱保護しγ-シクロ(2,3-エポキシマンニン)を得,これを水で煮沸するという簡単な操作(申請者らの発見した方法)でγ-シクロアルトリンを高収率(γ-CDから37%),短工程(計4工程)で合成した.γ-シクロアルトリンの結晶化を行い,X線結晶解析(独ダルムシュタット工科大の研究協力者所有の装置使用)を試みたが,結晶格子上の問題で不成功に終わった.さらにNMRスペクトルによって溶液中の構造解析を行った.室温では,β-及びγ-シクロアルトリンの構成糖であるアルトロ-ス(α-アノマー)は^1C_4,,^4C_1,^0S_2のコンフォメ-ションの速い平衡状態にあって単一の糖の様相を示していたが,-60℃では前者が依然として速い平衡状態にあるのに対し,後者は少なくとも二つのコンフォメーションに分裂する気配が濃厚であった.しかしそれ以上低温にする実験は機器の限度を超えるため断念した. α-シクロ(2,3-エポキシマンニン)の結晶化,X線構造解析に成功した.結晶作成に使用した溶媒エチルアルコールが,空洞に包摂され,水酸基が空洞の疎水性部位(エポキシ側)に位置し,それが二量体となってエチルアルコールの水酸基同士が水素結合をしている興味深い構造であった.この結果は,非グルコース環状オリゴ糖がゲスト分子を包摂する最初の直接的証明である.
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