平成11年度 1)ラット乳癌細胞Walker256/S細胞は、PTHrPをはじめとする骨吸収性のホルモンを産生分泌することなしに、LH-RHを過剰分泌しており、このため、脳下垂体からのエストロゲン分泌調節機構が破壊された結果、低エストロゲン血症となる。さらに、腫瘍移植に反応してTNF-αなどの骨吸収性のサイトカインの血中濃度が上昇した。このことから、LH-RH分泌能を有する腫瘍細胞を動物に移植することで骨粗鬆症モデルを作成する本研究目的の妥当性が明らかとなった。 2)Walker256/S細胞DNAからLH-RH遺伝子をクローニングし、pBK-CMV発現ベクターに組み込み、まず、ラット腹水肝癌細胞AH66にトランスフェクトしたが、LH-RH蛋白分泌能を有するトランスフェクタントは得られなかった。また、AH66細胞はPTHrPを分泌していることも明らかとなった。 平成12年度 3)PTHrP非産生細胞を探索したが可移植性動物癌細胞のほとんどがPTHrPを産生分泌していることが明らかとなった。そこで、PTHrP産生能のないことが確認されたマウス培養細胞NIH3T3へのLH-RH関連遺伝子フラグメントの導入を試みた。しかし、遺伝子導入が成功した細胞にあっても当該mRNA発現は認められるものの、LH-RH蛋白を分泌する細胞を得ることはできなかった。 4)この原因を追求したところ、NIH3T3細胞はLH-RH切り出し酵素を持たないためであることが示唆された。 結果として、本研究の計画年度内に所期の目的を達成することはかなわなかった。しかし、現在は、Walker256が特殊な細胞であるのか、あるいは他の内分泌系の癌細胞の中にLH-RH切り出し酵素を保有しているものがあるかを検討中である。
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